「今日どうする?」に答えられないとき|不登校の子が選びやすくなる7つの工夫
『今日は学校へ行く?』『勉強する?』『フリースクールを見に行く?』。本人の気持ちを尊重しようと聞いているのに、返事はいつも『分からない』『どっちでもいい』。そんなとき、保護者の方はどう支えればよいか迷うと思います。自分で選ぶことは大切ですが、疲れている子に大きな決断を任せることとは違います。選択肢の大きさと聞き方を変えることで、本人が答えやすくなることがあります。
「分からない」は、考えていないという意味ではありません
学校へ行くか休むか、新しい場所へ行くか、勉強を再開するか。どれも子どもにとっては、結果や周囲の期待まで考えなければならない大きな選択です。気持ちが揺れているときは、『行きたい気持ちもあるけれど怖い』『休みたいけれど遅れが心配』という複数の思いを、まだ言葉にできないことがあります。
文部科学省は、不登校支援について、登校という結果だけを目標にせず、本人の希望を尊重し、一人ひとりの状況に応じた支援を考えることを示しています。本人の意思を大切にするためにも、すぐに結論を求めず、答えやすい大きさまで選択を小さくすることが必要です。
1.大きな結論ではなく、次の10分を聞く
『これからどうしたい?』は、進学、学校、生活、家族への影響まで含む広い質問です。今すぐ決めなくてよいことまで考え始め、答えられなくなることがあります。
まずは『今から10分は一人でいたい? ここにいてほしい?』『今日は学校のことを話す? 明日にする?』のように、時間を短く区切ります。先のことを決める力が残っていない日でも、目の前の過ごし方なら選べる場合があります。
2.選択肢は二つほどにして、「決めない」も加える
『何でも好きなことをしていいよ』は自由に見えますが、選ぶ対象が多すぎて困ることがあります。本人が知っている選択肢を二つほど示し、どちらも違う場合や今は決められない場合の逃げ道も用意します。
たとえば、『プリントを一問だけ見るのと、今日は見ないのと、どちらが楽そう?』『見学の写真だけ見る? 場所の話だけ聞く? 今日はやめておく?』と聞きます。大人が選択肢を整理することは、本人の意思を奪うことではなく、選ぶ負担を減らす支えになります。
- AとBの二択に、「今日は決めない」を加える
- どちらを選んでも責められないことを先に伝える
- 一度決めても、途中で変更できるようにする
3.「する・しない」だけでなく、量と距離を選べるようにする
学校へ行くか行かないか、見学へ行くか行かないかという二択では、どちらも難しく感じることがあります。その間には、たくさんの小さな段階があります。
制服を着ずに学校の近くまで行く、保護者だけが先生と話す、フリースクールの写真を見る、入口まで行って帰る、短い時間だけ過ごす。活動も、一問だけ見る、一試合だけ参加する、同じ部屋で見ているだけなど、量や距離を変えられます。本人が選べるのは、行動そのものだけではありません。
4.言葉で答えにくいときは、指差しや合図でもよい
気持ちを詳しく説明すること自体が負担になる日もあります。紙に選択肢を書く、スマホのメッセージで返す、数字で負担の大きさを示す、うなずく、指を差すなど、言葉以外の返し方も使えます。
『話せるようになってから聞く』だけではなく、話さなくても希望を示せる方法を一緒に見つけます。答えが返ってこないときは、何度も同じ質問を重ねず、『今は決めないにしておくね。変えたくなったら教えて』と終えることもできます。
5.好きなことの中で、自分で決める経験を取り戻す
学校や進路に関する決定だけが自己決定ではありません。ゲームの役割や作戦を選ぶ、PCで調べるテーマを決める、読みたい漫画を選ぶ、飲み物や座る場所を選ぶことも、自分の感覚を確かめる経験です。
大人から見ると小さな選択でも、『自分で決めてよかった』『途中で変えても大丈夫だった』という経験が重なると、少し大きな選択に向き合う土台になります。選んだ内容を評価するより、『自分で決められたね』『変えたいと言えたね』と過程を受け止めます。
6.選んだ後は、成功・失敗ではなく「合っていたか」を振り返る
本人が選んだことが、予定どおりにできない日もあります。そこで『自分で決めたのだからやりなさい』と言われると、次から選ぶこと自体が怖くなります。選択は約束を守れるか試すためではなく、自分に合う方法を知るための試行です。
終わった後は、『どこが楽だった?』『何が少し負担だった?』『次も同じでいい?』と確認します。やめたこと、短くしたこと、別の方法に変えたことも、本人が状態に気づいて調整した結果として扱います。
7.安全と必要な手続きは、大人が責任を引き受ける
本人の希望を尊重することと、すべての責任を本人に渡すことは違います。健康や安全に関わること、学校への欠席連絡、制度や費用の確認などは、大人が情報を集め、必要な判断を支えます。
『あなたが決めたから』と結果を背負わせるのではなく、『大人が確認することはこちらでやるね』『嫌なことや変えたいことは教えてね』と役割を分けます。本人の言葉を学校や支援先へ伝えるときも、何をどこまで共有してよいかを、できる範囲で確認します。
自分で選べる居場所は、「選ばない日」も受け止めます
本人の意思を大切にするとは、いつも前向きな選択を求めることではありません。休む、見ている、あとで決める、途中で変える。そうした選択も認められると、『本当はどうしたいか』を少しずつ表しやすくなります。
LUMILIAでは、休む、好きなことをする、PC・ゲーム・eスポーツに取り組む、人とつながる、学ぶといった過ごし方から、その日の本人に合う入口を一緒に考えます。保護者の方だけの相談から、本人へどのように選択肢を伝えるかを整理することもできます。
参考資料
制度や支援の考え方は、以下の公的資料を確認しています。